写真1 中齢幼虫。深川、オオタカネバラ、2006/7/8。

写真2 終齢幼虫、体長17mm。写真1を飼育、2006/7/16。

写真3 産卵痕。深川、オオタカネバラ、2006/7/8。

幼虫の特徴
食べる樹種 バラ属(セイヨウバラ、ノイバラなど)。
食べる部位 葉。
発生時期 6月~9月。
食べ方など 葉縁から食べ葉脈を残す。隣接する葉から葉へと連続的に食べる。 集団性。
近くの枝に縦長の裂け目がある(写真3)。
形 態 体長最大20mm。胸腹部は黄緑色、黒点があり、尾端は暗い、終齢になると背面の黒小斑が目立つようになる(写真1~2)。頭部は黒いが、まれに黄褐色。胸脚は黒色、終齢では基部を除き淡くなる。
ミフシハバチ科では胸脚爪のそばに吸盤があり、腹部第1~9節は小環節数が3(背面の横じわは2本)。 ハバチ亜目では眼(側単眼)は左右に各1個、脱皮殻は頭部から腹部までつながり、頭部が縦中央で割れる。
注) バラ属には良く似たアカスジチュウレンジやニホンチュウレンジも発生する。アカスジチュウレンは若いときでは胸腹部に黒小斑がなく、終齢では頭部が黄褐色。ニホンチュウレンジは背面中央に1対の白線がある。

和名  チュウレンジバチ(文献1937)
別名 チュウレンジハバチ

学名 命名者・年   Arge pagana (Panzer, 1798)

分類  ハチ目(膜翅目)Hymenoptera、ハバチ亜目(広腰亜目)Symphyta、ミフシハバチ科Argidae


形態  幼虫の形態は上述のとおり(文献1959、2010)。成虫については文献1932、1939、1965、2010に記述がある。卵は楕円形、淡橙黄色(文献1959)。

寄主  セイヨウバラ・ノイバラ・ニオイバラ(文献1967)、オオタカネバラ(文献2010)。

生態  アカスジチュウレンジと同様である。北海道では成虫は6月中旬~7月上旬に採集されただけであるが、6月下旬~7月上旬に採集された幼虫は7月上旬~8月上旬または翌春に成虫になった;このため、年2回発生だが、年1世代と年2世代の生活環が混在しているようである(文献2010)。雌成虫は新梢を縦に裂き、数十卵をかためて産む;幼虫は群生することが多く、小葉の主脈を残して食害する(文献1959)。

分布  北海道・本州・四国・九州、サハリン、朝鮮半島、中国、モンゴル、シベリア、ヨーロッパ(文献1939)。
 北海道に分布することは1939年に初めて報告されたが(文献1939)、1932年に道内で採集された標本が確認されている(文献2010)。道内では深川・八雲・函館で確認されている(文献2010)。

発生状況など  幼虫はバラ属の食葉性害虫として古くから知られている(文献1937など)。しかし、本種は主として山麓地帯に発生し、あまり多くない(文献1977)。道内でも同様で、公園や庭での発生は観察されず、主に山地の野生のバラ属に発生するため食害は問題にならない;集団性のため食害は目につきやすいが、樹全体の葉を食べつくすような被害は観察していない;現状では防除は不要である(文献2010)。しかし、商品栽培上は防除が必要となるかもしれない。なお、ヨーロッパでは害虫として知られている(文献1998など)。


文 献
[1932] Takeuchi, K., 1932. A revision of the Japanese Argidae. Transactions of the Kansai Entomological Society, 3: 27-42.
[1937] 渡邊福寿, 1937. 日本樹木害蟲総目録. 487pp. 丸善, 東京.
[1939] Takeuchi, K., 1939. A systematic study on the suborder Symphyta (Hymenoptera) of the Japanese empire (II). Tenthredo, 2: 394-439.
[1959] 奥谷禎一, 石井梯, 安松京三, 1959. 膜翅目. 江崎悌三, 石井悌, 河田党, 素木得一, 湯浅啓温, 編集, 日本幼虫図鑑: 546-590. 北隆館, 東京.(幼虫の形態、生態)
[1965] 富樫一次, 1965. ナギナタハバチ科, ヒラタハバチ科, キバチ科, クビナガキバチ科, ヤドリキバチ科, クキバチ科, ヨフシハバチ科, ハバチ科, マツハバチ科, コンボウハバチ科, ミフシハバチ科. 朝比奈正二郎・石原保・安松京三(監修), 原色昆虫大図鑑III: 243-254, pl. 122-127. 北隆館, 東京.
[1967] 奥谷禎一, 1967. 日本産広腰亜目(膜翅目)の食草(I). 日本応用動物昆虫学会誌, 11: 43-49.(宿主)
[1977] 奥野孝夫, 田中寛, 木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑. 365 pp. 保育社, 大阪.(生態、防除)
[1998] Taeger, A., E. Altenhofer, S. M. Blank, E. Jansen, M. Kraus, H. Pschorn-Walcher and C. Ritzau, 1998. Kommentare zur Biologie, Verbreitung und Gefährdung der Pflanzenwespen Deutschlands (Hymenoptera, Symphyta). In TAEGER, A. and S. M. BLANK (eds), Pflanzenwespen Deutschlands (Hymenoptera, Symphyta). Kommentierte Bestandsaufnahme. p.49-135, Taf. 3. Goecke and Evers, Keltern.
[2010] 原秀穂, 2010. 北海道における膜翅目ハバチ亜目の樹木害虫I:ナギナタハバチ科, ヒラタハバチ科, ミフシハバチ科, コンボウハバチ科. 北海道林業試験場研究報告, 47: 51-68.